キャプテンポコの実地覚書深海と山の水を巡る旅程設計
キャプテンポコの旅の手帖には、店名と同じくらい、空白の時間を残しておきたい。東海道新幹線の窓から富士山を探す時間。由比の海岸側で、風が穏やかな日に湾へ落ちる山影を待つ時間。富士山が見えなくても、海の表情まで消えるわけではない。夜の桜えび漁は、沖に出る船を岸から見送るだけでも、翌日の一皿が天候に委ねられていると教えてくれる。
朝霧の山里では、おろしたわさびの香りが、目を覚まさせるように鼻へ抜ける。ただし、有東木の沢を流れる水まで、ひとまとめに富士山の伏流水と呼んではいけない。有東木は安倍川上流域の山里であり、伊豆のわさび田とも、富士山麓の湧水とも、水の来歴が違う。名高い山の名を借りず、その沢、その斜面、その管理の仕事を見ることが、この旅の大切な足取りになる。
浜松へ着けば、今度は焼き台の音に歩調が変わる。脂が炭へ落ちる小さな響き、タレをくぐった身が再び火に戻る瞬間。長い歴史を持つ店でも、目の前の一尾を焼く火は今日の火である。百年の煙という言葉で包みたくなる営みの実体は、日々の仕込みと火加減の更新なのだろう。帰りのひかり号で思い出したいのは、食べた品数ではなく、次はもう少し長く留まりたいと思えた場所のことである。
- 静岡駅または浜松駅に停車する東海道新幹線ひかり号を選び、在来線と路線バス、必要に応じてレンタカーを組み合わせる。有東木などの山間部は移動に時間がかかるため、由比・用宗の港めぐり、わさびの里、浜松・浜名湖を別の日に分けると無理が少ない。
- 由比港と用宗港では、訪問前日と当日の公式案内で出漁、入荷、営業を確認する。夜漁の桜えびと朝漁のしらすは確認のタイミングが異なり、直営店でも生の品が必ずあるとは限らない。港の作業区域やわさび田へは無断で立ち入らず、見学や体験は受け入れ先に予約する。
- 本わさびの根茎を持ち帰るときは、店の指示を優先し、保冷して移動する。家庭では湿らせたキッチンペーパーなどで包んで袋や容器に入れ、冷蔵し、乾燥と過湿を避ける。状態によって保存できる期間は異なるため、一か月の鮮度を保証するものとは考えず、こまめに確認して早めに使う。